先行商標との類似を回避するために実務上行われているアサインバックというスキーム.
コンセント制度が始まっても以前として実務上広く行われています.
アサインバックというスキームは、法律に基づくわけではなく、ただむかしから実務的な解決方法として行われているだけです.
実務上行われているから合法というわけもなく、違法かもしれないし、違法とは言えなくてもグレーなのかもしれないわけで、ただ単にむかしからやっているという理由で盲目的にアサインバックを選ぶのはモラル的にどうなのだろうと思ってしまいます.
代替手段がないなら仕方がなくても、今は不正競争法改正によって制度化されたコンセント制度があるわけで、合法的な方法があるにもかかわらず、なおアサインバックを選ぶというのはどうなのよ、という訳です.
拒絶理由で指摘された先行登録商標の商標権者を暫定的に商標出願人に変更して、これにより拒絶理由をクリアしたあとに、もとの出願人に変更して登録をするという流れは、外形的に見ても審査官を騙しているようでなりません.
法的にも、まずその商標を使用するつもりがないであろう者が出願人になるわけで、使用意思の問題がでてきます.
出願人と権利者との間で、買い戻し特約付きの譲渡契約を締結するわけですけど、譲渡の目的が拒絶理由を回避するため、すなわち審査官を欺いているわけです.
この流れは、例えて言えば、不動産の名義を自分ではなく、他人名義にして、目的達成後に自分名義に戻すというのと同じです.
ここでいう目的は、例えば、住宅ローンで、ブラックリストに登録されている自分の名義では住宅ローンが通らないから、ローンを通す目的のために、家族名義で登記し、ローンが通ったら自分に戻すみたいなものと同じです.
ちなみに、このスキームは民法646条に基づくもので外形的には違法ではないとはいえ、邪な方法であることには違いありません.
商標のアサインバックは法律的な裏付けもないわけで、外形的にも実質的にも合法とは言えない方法だと思っています.
代理人として依頼者の利益のために働くのは当然とはいえ、もし倫理的な問題を抱えているなら弁理士法違反を問われかねません.
ただモラルと言ったところで、モラル違反はルール違反ではありません.
とはいえ、法律に違反していなければ何をやってもいいというわけではなく、ルールはもちろんモラルという点でも問題があってはいけないわけです.
このモラルというのは厄介な価値観で、人によっても世代によっても立場によっても違っていて、モラルがないと叫んだところで暖簾に腕押しなわけなのです.
世間一般では非常識と思えることも業界内では常識になっている、なんてことはよくあることで、もしかしたら特許業界の常識であるアサインバックも将来的には違法に昇華する日がくるのかもしれません.