特許や商標は登録された後にも、無効審判や取消審判が請求されて権利の有効性が争われるという特殊性があります.
ところが代理権は登録により消滅してしまうため、無効審判や取消審判があった場合、特許庁は権利者に直接、副本を送達します.
特許庁に対する住所変更を怠ると、この副本の送達が失敗に終わり、結果として、権利者が知らない間に登録が取り消されるということもあり得るわけです.
日本の郵便事情は整備されているため、例え、転居届が出ていなくても、また転居届けの有効期間が満了しても、郵便局が機転を聞かせて配達不能にまで至ることは稀かもしれません.
しかし、最近は、個人情報が厳格に扱われているので、イレギュラーな対応が期待できないこともあるので、特許庁への住所変更は確実にしておきましょう、ということになります.
今回の事件は、特許庁の運用が限界に達していることを思わせるので、備忘録として記録に残しておこうと思います.
事件の概要は、引用商標に対して不使用取消審判を請求したというごく普通の事件です.
権利者に副本が直接送達するということは特許法134条に基づくわけですが、権利者が在外者の場合に、条文通りに副本を権利者に送達することが面倒なので、こっそりと代理権が消滅したはずの出願代理人に審判があったことを事前に通知し、受任する場合は、副本を送達するという運用をしています.
この運用がうまく機能しているからこそ、いまでもこのような運用をしているわけですけど、今回の事件では、代理人が受任しなかったため、副本を直接、在外者に送達したわけです.
ところが送達したはずの副本が届かず、何度か再送するもそれも失敗に終わり、結局、審判請求があったことを知らずに、登録が取り消されるという結果になってしまいました.
審判請求されても取り消されていい商標なら権利者も何もせずに放っておくことはよくあるので、今回の審判もそのような扱いがされたと思っていました.
ところが、審決が出され出訴期間が経過したあとに、なんと商標権の更新申請が出されているではありませんか.
これが何を意味するかと言えば、取消審判が請求されていることを知らずに権利が存続しているものだと思い、権利者が更新申請を日本の代理人に依頼したということになります.

上の記録では分かりませんが、結審が通知され請求人代理人である私のもとには審決書が送達されていたので確定する日まで待っていたのですが、11月26日に更新申請が行われ、出訴期間が経過して審決が確定していることは特許庁内でも明確だったにもかかわらず、12月5日に更新申請登録通知が発出されていました.
審判部の情報が庁内DBに登録されていなかったということだと推測するわけですけど、なかなかここまで不運が重なることはないと思います.
一つ目の不運は、なぜ出願代理人が受任しなかったのか、なぜ通知を受けた出願代理人と権利者との情報共有が失敗したのか。
二つ目は、なぜ現地で郵便事故が起こったのか。
世界的にも著名企業なので移転ということはそうそうあることではなく、あったとしても転居による配達不能ということは考え難いと思います.
そして私が以前から不思議に思っていることの一つに、登録原簿に記録されている権利者情報が原文表記ではなくカタカナ表記であることです.
カタカナ表記の権利者情報に基づいて宛名を書けるはずもなく、それでは一体、どうやって外国郵便の住所宛名を英文で書いたのでしょう.
三つ目は、なぜ期限通りに庁内手続きを進めなかったのか。
在外者の場合は、職権で付加期間が設けられます.
しかし、それを考慮しても審判請求から結審、そして審決、さらには確定までの期間が恣意的に延長されているのが気になります.
想像するに、権利満了が間際なので、更新がされない、もしくは更新申請がされたら、その代理人に連絡をとる、ということを期待して内部手続きを進行させなかったのではないでしょうか.
四つ目は、なぜ更新申請があったときに申請代理人に確認をしなかったのか、なぜ審判部の情報が年金部で共有されなかったのか。
期待?通りに更新申請があったのに、なぜ代理人に連絡を取らなかったのか。連絡をとったのなら、登録通知が出せるはずがありません.
権利者は世界的に著名な企業なので、この後、どのような行動を取るのでしょう.
追記 2025/12/11
審判部に電話して情報をアップデートして欲しいことを依頼していたこともあり、次の日にアップデートされていました.
(JPlatpatはINPITの管轄なので特許庁は関与していませんと言っていたましたが即日アップデートです)

被請求人への審決謄本が現地で送達されていないので再送しているという説明でしたが、その記録はありません.
そして被請求人の送達報告が電話をした日というのも、一体、どうなっているのか、という感じです.
もし電話をしていなければ送達報告もされることなく有耶無耶だったということです.
付加期間も経過して審決が確定しているのに、12月4日付けで更新申請登録通知が発送されています.
審決の確定前に更新申請があったことにするのかもしれません.
更新申請登録を職権取消にする方法があるのか分かりませんが、この後はどうなるのでしょう.
追記 2025/12/18
確定登録通知後も、しばらく権利が存続されたままでしたが、ようやく権利抹消が記録されました.

権利抹消日は2025/10/20。
これは審決に対する不服申立てが尽きた日です.
しかしながら閉鎖登録日は2025/12/15なわけです.
権利が消滅した日から閉鎖登録されるまでの間に、権利者から更新登録申請が行われ、特許庁が更新登録を行ったあとに、閉鎖登録をしたというタイムラインになっています.