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特許庁の「算数ミス」で出願人が費用負担!?フィリピン意匠審査での理不尽な体験

特許や商標の国際出願の実務において、各国の特許庁(審査官)から拒絶理由通知や方式指令を受けることは日常茶飯事です。

その指摘が法的な解釈の違いや先行技術に基づくものであれば、代理人としての腕の見せ所でもあります。
しかし、今回フィリピンの知的財産庁から届いた方式審査報告書は、私のこれまでの実務経験の中でも類を見ない、あまりにも杜撰で理不尽な内容でした。

 

小学生でも間違えない「期間計算」のミス

事の発端は、フィリピンへの意匠登録出願に関する優先権主張の却下通知です。 意匠の場合、最初の出願(基礎出願)から「6ヶ月以内」に外国出願を行えば、優先権が認められます 。

今回のケースにおける実際の日付は以下の通りです。

基礎出願日: 2024年11月21日

フィリピンへの出願日: 2025年4月28日

11月21日から4月28日までは、どう計算しても「5ヶ月と7日」であり、6ヶ月の優先期間内に余裕で収まっています。

しかし、フィリピン特許庁から届いた公式な審査報告書には、堂々とこう書かれていました。

 

「本出願は(中略)最先の出願日から6ヶ月と7日経過しているため、優先権の主張は認められない」

 

さらに驚くべきことに、同じ書類のすぐ隣で出願年が「2028年4月28日」と誤記されている箇所すらありました 。審査官がカレンダーをどう見間違えたのか、あるいはシステムにどんな誤入力をしたのか分かりませんが、あまりにもお粗末な「思い込み」によるミスです。

 

特許庁のミスの尻拭いを、なぜ出願人が?

人間が審査を行う以上、ミスが起こること自体は百歩譲って理解しましょう。昨今話題のAIがもっともらしい嘘をつく「ハルシネーション(幻覚)」のように、人間の審査官であっても、一度思い込むと目の前の数字の矛盾に気づかなくなることはあり得ます。

最も憤りを感じているのは、「特許庁の明白な過失を正すために、出願人側が費用と労力を負担させられる」という理不尽なシステムです。

この誤りを訂正するためには、現地代理人を通じて「応答書」という公式な書面を提出しなければならず、当然そこには現地代理人の手数料(今回のケースでは200ドル近くの費用)が発生します。特許庁に「計算が間違ってますよ」とメール一通で伝えて済む話ではなく、形式的な手続きを踏まざるを得ないのです。

 

「そちらのミスなのだから、そちらで無料で訂正してくれ」というのが当然の感覚ですが、海外の実務ではこの「当然」がすんなりとは通用しないことが多々あります。

 

「優先権が認められませんでした」という報告を現地代理人から受けた際、もし「特許庁が言うならそうなのか」と日付の裏付けを取らずに見過ごしてしまえば、依頼者の重要な権利(新規性)が失われる致命的な事態に直面していたかもしれません。

代理人の重要な役割の一つは、こうした海外特許庁や現地代理人の杜撰な処理から依頼者を守る「防波堤」となることです。公式文書に書かれた日付や要件を一つ一つ自分たちの目で確認し、理不尽な審査に対しては毅然と立ち向かう。その確認作業こそが、真の意味で権利を守ることに繋がると、今回の信じられない一件を通じて改めて痛感しています。