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海外代理人からの「キックバック要求」と、日本の弁理士業界の現状

先日、ある海外の代理人から日本での商標登録出願に関する問い合わせがありました。

当事務所の料金表に基づき、出願から登録までの見積もりと手続きの要件を丁寧に案内したところ、折り返し届いたメールには耳を疑うような提案が書かれていました。

その内容を要約すると、以下のようなものです。

今後の案件について、あなたの専門家報酬の25%を私の取り分として受け取る形で合意できないか。クライアントには満額をあなたの口座に振り込ませるので、その後、合意したパーセンテージ(25%)を私の口座に送金してほしい。

いわゆる「キックバック(リベート)」の要求です。出願や拒絶理由通知への対応など、実務を行うのはすべてこちらであるにもかかわらず、単に案件を右から左へ流すだけで報酬の4分の1を中抜きしようという、非常に下品な提案でした。もちろん、到底受け入れられるものではありません。

 

珍しくない海外からの「利益供与」の要求

実は、こうしたキックバックを要求してくる海外の代理人は、今回の一件に限らず少なくありません。彼らはこれを「パーセンテージ・ベースのビジネス」などと尤もらしい言葉で表現しますが、実態は単なる不透明な利益供与です。

依頼者(クライアント)からすれば、自分が支払った費用の一部が、実務に全く関与していないブローカーのような代理人の懐に入っていることになります。これは依頼者に対する背信行為以外の何物でもありません。

 

日本弁理士会からのタイムリーな注意喚起

そんな折、ちょうど日本弁理士会から全会員に向けて、非常にタイムリーな注意喚起とアンケート調査のお知らせが届きました。

その内容は、「近年、弁理士業務の受任に関して、業務に実質的に関与していない者への報酬分配等が散見される」というものです。こうした行為は弁理士の独立性を損ない、依頼者との信頼関係を危うくし、ひいては業界全体の信用失墜につながるとして、会則を改正して「業務に実質的に関与していない者への報酬分配の禁止」および「周旋対価支払の禁止」を明文化することを検討しているとのことでした。

 

なぜ海外代理人は強気で要求してくるのか?

この弁理士会からの通知を読み、そして海外代理人からのメールを見返して、ひとつのやるせない事実に思い至りました。

弁理士会がわざわざ会則を改正してまで禁止規定を設け、実態調査のアンケートを実施しなければならない状況にあるということは、「日本の弁理士の中に、こうしたキックバックや不当な利益供与の要求にホイホイと応じてしまう人が少なからず存在する」ということに他なりません。

海外の代理人が初対面のメールでこれほど堂々と25%ものキックバックを要求してくるのは、過去に日本の他の特許事務所がその要求を飲み、彼らにとってそれが「成功体験」として定着しているからでしょう。「日本の弁理士は、案件欲しさにキックバックを払ってくれる」と舐められているのです。

 

理念以前の「馬鹿らしい」現実と致命的な口座凍結リスク

専門家としての独立性云々といった話以前に、実務面・経営面から見ても非常に現実的な問題があります。

まず、昨今のマネーロンダリング対策などの影響で、銀行の海外送金の審査は年々厳しくなっています。ただでさえ結構な薄利で請け負っている実務の中から、25%もの額をわざわざ海外へ送金する手続きを取るなんて、単に馬鹿らしくてやってられません。

そして何より一番厄介なのが、相手の指定する送金先がコンプライアンス上問題のある「ブラック口座」であった場合のリスクです。もしそのような口座と知らずに取引(送金)を行ってしまえば、日本のこちらの銀行口座まで巻き添えで凍結(ロック)されてしまう危険性があります。

目先の案件欲しさに、到底割に合わないキックバックを支払い、あまつさえ事務所の口座がロックされて日々の業務そのものが停止に追い込まれるかもしれない。そんな致命的なリスクを負うことなど絶対にできません。