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1つの発明に10の代替案、私は「発明の理解」より「代替技術の発掘」に時間をかけます

「素晴らしい発明ができたので、すぐに特許を出願したい」

開発者や経営者の方から、このように熱のこもったご相談をいただく瞬間は、いつも胸が躍ります。しかし同時に、弁理士である私はあるプロとしての「冷徹な視点」を持ってその発明に向き合います。

それは、「この特許、競合他社に『別の抜け道』を教えてあげるだけの結果になりはしないか?」という懸念です。

結論から言います。 1つの発明を創作したとき、同時に10の代替発明(別ルート)を考える熱量がないのであれば、その特許は出願すらしない方がいいことすらあります。

 

世の中には、代替がきく技術ときかない技術があります。

代替がきかない技術の代表例が「医薬」。特定の分子構造(物質)が特定の受容体に作用して効果を発揮する場合、その分子そのものをピンポイントで押さえれば、他社は簡単に真似できません。

しかし、それ以外のほぼすべての技術(機械、IT、デバイス、ビジネスモデルなど)はどうでしょうか?同じ目的・効果を実現するための「代替技術」が、無限と言っていいほど存在します。

山頂(目的)にたどり着くルートは、あなたが思いついたAルートだけではないのです。Bルートも、Cルートも、あるいはヘリコプターで一気に登る方法(Dルート)もあるかもしれません。

もし、Aルートという「1つの実現手段」だけを丁寧に書いた特許を出願し、無事に権利を取得できたとします。

一見すると成功ですが、代替技術をカバーしていない特許は、競合他社から見ればこう映ります。

「なるほど、この課題を解決すれば市場で勝てるのか(課題の発見)。そして、相手はAという方法でやってきた。じゃあ、うちはAを綺麗に回避して、同じ効果が出せるBかCの方法で開発しよう」

むかしと違って今の時代、「課題を解決する手段」よりも「課題そのもの(ニーズ)を見つけること」の方が圧倒的に重要です。 現代の優秀なエンジニアや開発環境があれば、ひとたび「解くべき課題」が明確になれば、その実現手段(代替技術)など簡単に見つけ出されてしまいます。

つまり、代替技術を押さえずに特許を取る行為は、競合他社に「解くべき正しい課題」を教え、さらに「ここ以外を通れば安全ですよ」というヒントを与えているだけ(=重要な情報の無償提供)になってしまうのです。これでは本末転倒、まさに「利敵行為」です。

 

だからこそ、私が特許明細書を書く(あるいは特許戦略を練る)ときに、最も心血を注いでいるのは「発明の理解」そのものではありません。

もちろん、いただいた発明を深く理解することは大前提です。しかし、そこに留まっていてはプロの仕事としては不十分です。私の仕事の本番は、その先にある「代替発明の発掘」にあります。

  • 「この構成を、別の汎用的な部品やアルゴリズムに置き換えられないか?」

  • 「あえて逆の手順で行っても、同じ効果が出てしまわないか?」

  • 「競合他社の開発チームなら、この特許を見たあとにどんな嫌がらせ(回避策)を考えてくるか?」

ここを徹底的に掘り下げ、1つの発明の周りに10の防衛線(代替技術の)を張り巡らせる。そうして初めて、他社が簡単に参入できない「本当に使える特許」になります。

 

「とりあえず特許を出す」のは止めましょう。

  • 課題が見つかれば、実現手段はいくらでも見つかる時代。

  • 1つの発明に対して、10の代替案をセットで網羅する。

そこまでやり切って初めて、特許は自社を守る強力な武器になります。もし「どうしても代替技術が思いつかない、カバーできない」のであれば、あえて出願せずに「社内秘密(ノウハウ)」として秘匿する方が、よほど賢明な判断であるかもしれないのです。

 

 

 

 

 

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